こどもの頃、遊びに出かけて地べたに座ったとたん飛び上がるほど痛い経験があります。家に帰ってから確認すると、尻に小さいできものが出来ていた記憶があります。その度に祖母が塗ってくれた薬があります。年配のかたなら懐かしく感じるかたも多いかと思われます「たこの吸出し」です。昔からあるおできの薬「たこの吸出し(吸出し青膏)」は、現在でも販売されているロングセラーのくすりです。このユニークなネーミングのとおり、パッケージにはたこの絵がかかれています。中身は濃い緑色で、少し不気味な感じでですが、化膿したおできや腫れ物に塗ると、自然に膿を出してくれるのです。
この軟膏の不気味な緑色はなぜかご存知ですか。実はこの薬の成分に緑青が使用されていたそうです。銅が安全な事はもちろん、薬として私たちの生活を支えていたこともよくわかります。
※現在の薬は、緑青から硫酸銅に変わっています。
このように銅と医学の係わり合いは古くからあるそうで、薬や医療器具などさまざまな形で健康に関わり、支えてきということです。ここで医療の分野で活躍する銅を紹介しています。
漢方の分野には、古くから書物に伝わる沢山の薬があり、その治療には沢山の薬の中から症状に応じて適切な薬を処方するわけですが、その中に銅や緑青も使用されていました。漢方の有名な本草書「本草網目」によると「銅で薬になるのは赤銅である」「金と銅の合金は薬として最も秀でている」と書かれているそうで、銅が重要な薬として扱われていたことがうかがえます。漢方での緑青は、殺菌剤や止血剤などに、赤銅は風邪薬としてしようされていたようです。
はるか昔の古代エジプト時代、今から3000年も前から医療器具としてナイフ、ペンチ、ピンセットなどに銅が使用されていたようです。医療器具に銅が使われた理由は錆にくく、加工しやすい事と、銅の抗菌効果で器具が衛生的に保たれることも利点の一つであったでしょう。いま、医療器具の多くは手入れの簡単なステンレス製などに代わってきていますが、衛生的な環境を大切にした医療現場ですから、抗菌効果のある銅を見直す時がくるかもしれませんね。